この記事は元は2025年5月29日にnoteに投稿したものです。
https://note.com/kasai_1122/n/ne806688afc8
私には幼少から右目に斜視がありました。
もう40年以上お付き合いしてきたのですが、先日手術をしました。
なんで今さら手術なんて・・・。
それは他でもない。新しい私に会いたかったからなのです。
子供の頃の私
おそらく1、2歳ころくらいまでの私は写真で見返すと、自分で言うのもなんですがとてもかわいい顔をしていました。
三姉妹の末っ子だったし、みんなにかわいがられて育ったと思います。
一人歩きがなかなかできなくて運動発達の遅れを心配した母が私を子ども療育センターに連れて行ったという話を、大きくなってから聞きました。
それと時を同じくしてか、それとも後になってからか、そこら辺は定かではないけれど、右目の斜視と顔面神経麻痺が出現しました。
母からもいつそれが出現したのか聞いたこともなく、今となっては誰もわからないけれど、いつの頃からか写真の私の顔は変わっていました。
そしてそれは、歳を重ねるにつれ強くなっていったようでした。
言語聴覚士としての自信
私の中では、やっぱりそれは大きなコンプレックスの一つでした。
治るものなら治ってほしい。いつもそう思っていました。
斜視は手術してもすぐ元に戻るからしないほうがいい。
そうお医者さんから言われてきました。
だから、もう諦めていました。
言語聴覚士になって病院で働き始めた頃、ある人に言われた言葉にショックを受けたことがありました。
「ちゃんと見えてるの?」って。
言語聴覚士にとって、患者さんの口の中を診たり、視診で状態を評価することも大切なことです。
自分はこれまで、自分の見ている世界が「ふつう」だと思って生きてきました。
でも、本当は「ふつう」ではないのか?見えていないだけで、もっと違う世界があるのか。
患者さんの状態も、「正しく」見えていないのか?
そう思うと、自分はこの医療の世界には向いていないのだろうか・・・。
言語聴覚士として、本当に自信がなくなっていきました。
車の免許
そんな私でしたが、もう一生自分には難しいと思っていた車の免許を取ることができたのです。
車との出会いは、私を大きく変えてくれました。
その車の免許取得に至った経緯についてはこちらをご覧ください。
https://note.com/kasai_1122/n/n997880114660
こうして自分の世界が広がった私は、同時に自信も持てるようにもなったのです。
その自信とは、言語聴覚士としての自信、というより「生きる」自信だったかもしれません。
専門医との出会い
昨年、斜視の専門と言われる医師との出会いがありました。
治るものなら治って欲しいと思ってきた斜視でしたが、ほとんど諦めてもいました。
そんな中、出会ったその医師は、初めて「する価値はある」と言ってくれた医師でした。
単純な私は、その言葉に心が踊りました。
治るの?自分の知らなかった世界が見えるの?
また、かわいかった自分の顔に近づけるの?
本当に心が躍りました。
一方で、やはり恐怖と不安も伴っていました。
余計見えなくなったらどうしよう。車に乗れなくなったらどうしよう。
随分悩みましたが決断しました。
やってみたい。後悔したくない。
新しい私に会いに行きたい。
夫も、私が決めたらいいと言ってくれました。
こうして、地元から離れた大学病院で手術を受けることになりました。
決行の日
その日は、2025年5月14日でした。手術を決めてから約半年後のことでした。
その間は、ずっと期待と不安が交差した日々を送っていました。
斜視の手術は一般的には局所麻酔下で行われるようですが、私の斜視は難しい斜視でかなり筋肉を触ることになるということで、全身麻酔下で行われました。
2020年に骨折の手術をした際に、全身麻酔は経験していました。
今回の手術では、幸か不幸かこの5年前の経験があったことである意味乗り切れたような気がしています。
手術台で看護師さんに声をかけられ、気がついたらすべては終わっていました。
恐る恐る
手術翌日にはもう退院でした。たった2泊3日の入院生活。
骨折で7ヶ月半も入院したことを思うと、なんとも拍子抜けのような気持ちでした。
そして、次々に新しい入院患者さんがやってくる大学病院。
一大決心して手術に踏み切ったけど、病院にとったら単なる一患者。
まあ、そんなもんだよね〜なんて、一抹の寂しさも感じながら、まだ右目をガーゼで覆われた顔を恐る恐る鏡で覗いてみたのでした。
新しい私
手術から2週間経った今、ようやくこれまで通りの生活に戻ってこれました。
心配していた車の運転もこれまで通りにできます。ほっとしました。
果たして、新しい私に出会えたか?
斜視の状態は、正直自分が期待していた通りにはなりませんでした。
術前にも医師から、難しい斜視だから完治はできないかもしれないとは言われていました。
期待していただけにガックリはきています。
完治しないにしてももう少し変わってくれたらとは思っていたので。
だけれども、手術をしてよかったと思っています。
それは、この結果が知れたから。
何もしなかったら、あの時手術してれば・・・って思わないといけない。
この経験が、また私を強くさせてくれました。
どんな時も自分の意思で決断する勇気、覚悟を教えてくれました。
だから、そう。新しい私に出会えたんだ。
新しい私になれたんだ。
こんにちは、新しい私。これから、もっともっと新しい世界に飛び立とうね。
そんな気持ちで、今、過ごしています。